Journal

殆ど知らずに生きている

TAKEHIKO YANASE

去年から編集長を務めているインターローカルマガジン「HERES」の取材で、佐賀県鹿島市へ。有明海の西部に位置する佐賀県は全国の1/4ほどの占める海苔の生産地。地図を改めて見てみると、有明海の奥行きはすごい。およそ100本の川が流れ込み、栄養塩が豊富だそうだ。栄養塩という言葉も今回初めて知った。潮の干満差は最大6m。昼間は普通の海だが、夕方にはそこに水面はなかった。その上下する水面をうまく活用し、海苔は水中と空中を往復し、旨味を蓄えていく。水温上昇と雨量の不足、ダムなどの河川開発で海苔の生産量は低下している。海苔師たちは植樹などにも励んでいるという。森が川を、川が海をつくっている。これまで幾度となく海苔を食べてきたが、それがどんなものなのかを知ることができてよかった。気づけば、身の回りにあるものについて、殆ど知らずに生きている。

鹿島市の出張からの帰り、スマホ、PC、タブレット、モバイルバッテリーの充電がすべて切れてしまった。飛行機のUSBはいまだA型で充電もできない。台風の影響で飛行機も遅れ、慌ただしくバスに乗り込まざるをえなくなり、充電する隙がない。アップルウォッチだけが動いており、電車には乗ることができたが、帰り道で何もできず、久しぶりに無音な時間を過ごした気がする。そんな時間もいいよねと思いつつ、次からは複数のバッテリーを出張には持っていこう。

週末は選挙。言葉にしているか、意識しているかはそれぞれだが、誰もが課題や希望を持って生きているはずで、自分もそうだと思う。そんな自分の想いと、各党のマニフェストを照らし合わせてみる。一番近しい党、人に票を投じる。全部がぴったりということはほとんどないだろう。自分が出る側だったらどんな公約を掲げるだろうか。それはなぜで、どのようにそれを実現するのだろうか。そんなことをゼロから立ち上げていくのは骨が折れるが、政治家の言葉を聞いて政治家を選ぶのではなく、時代を感じ、自ら築き上げた考えに基づいて政治家を選びたい。情報に踊らされないためには、自らが学び考えるしかない。

そういえば、金曜日のPEOPLEに常連の鏝晴さんと別所さんが来てくれた。リニューアルした道の駅がなんとも残念だったという話から、ハイボールを4杯飲んだ末のテンションで「たけちゃんが町長になったらいいよ」と言ってくれた。自分が町長になったとしたら、どんな公約を掲げて、どんなことができるだろうか。何事も真に受けて、妄想してみるのは面白い。政治のことも、殆ど知らずに生きている。

聞くことは愛を注ぐこと

TAKEHIKO YANASE

二週連続の出版イベント。この週末は、doyoubiの瀬谷薫子さんによる「野菜とマフィン」の会をPEOPLEで開催。瀬谷さんは両日マフィンも販売しながら、土曜日はidoの飯田将平さん、フォトグラファーの上原未嗣さんを交え「編集」、日曜日は横田農場の横田岳くんとSOU FARMの柳田大地くんとともに「野菜」というテーマでお話をした。僕は聞き手という立場で、それぞれ3人のゲストからお話を聞いた。話し手1名を相手に聞き手をやることは少なくないが、3人の話を聞きながらテーマに沿って話を前に進めていくというのは別の難しさもあり、学びがあった。コツのようなものは言葉にできないが、身体知は何かしらたまった気もする。Podcastも含めて、聞き手という役割を求められることが多くなってきている。コンテンツにおける聞き手論を自分なりに深めていきたい。聞くということについて聞くPodcastをやりたいとこれを書きながら思ったりした。そんなにたくさんやれるはずもないのだが。今、世の中にはほんとうの意味での「聞く」が足りないのではないか。聞くことは愛を注ぐことなんだと思っている。

イベントのお客さんが「父が畑をやれなくなって」とA4サイズ2枚の資料を渡してくれた。どうやら、畑を無償で引き取ってくれる人を探しているという。畑の多くは、地主さんが農家さんに無償もしくはそこまで高くない金額で貸していることが多いという。地主さんとしては受け継いだ土地のメンテナンス(主に草刈り)をしてくれる人の存在は貴重であり、それを農家さんにお願いしている感じなのだと、農家の友人から聞いた。相談を受けた土地もそのような状況にある。自分がやりたいが、手におえない広さである。小川町の土地の相談の受け皿として、何かハブになれればいいのだが。いや、なろう。

UNE STUDIOの児林くんから「つぶらなカボス」をもらう。お中元でもらったそうだ。ジュースを久しく飲まなくなった。以前は一時間以上の車移動の度に三ツ矢サイダーなどを買って飲んでいたし、小川町の家に引っ越したばかりのコロナ禍は、一階にある自動販売機でペプシを買ったりしていた。ジュースを飲まなくなってから、痩せた。痩せたというか浮腫みが取れた感じ。ジュースを飲まなくなると、ジュースを飲みたいと思わなくなる。減量の初手としてジュースを断つのは良手だと思っている。どうやら肝臓にもよくないらしい。それでも「つぶらなカボス」はとても美味しかった。

photo:Mitsugu Uehara

うまく書けないということが証明してくれる

TAKEHIKO YANASE

金曜日の炎天下。徳谷柿次郎さん率いるHuuuuのみなさんが小川町にやってきて、町を案内した。いろいろな地域を見てきている人に回った感想を聞く機会は貴重で、相対的に町の特徴を言葉にしてくれることをどこかで期待してしまう。半日一緒にいることで、どういうところを見て、どういう反応をするのか、細かいところまで感じ取れる。言葉にならない細部にこそ、センスが磨かれる何かがある気がする。うまく書けないということが証明してくれるくらい、とても充実した時間だった。Huuuuのみなさんは素敵な方々で、信濃町にも近いうちに行きたい。

自分が住む町の本作り、経済合理性との付き合い方、仲間の作り方、わからなさ3割の法則、町に編集者がいることの意味、炎上しないディフェンス力、ヒップホップ的なりあがり、覚悟の決め方、Webと紙の縦と横。夜のイベントでは、いろいろな話が聞けた。録音はしてみて、悪くない音質で録れていたので、どこかで出してもいいかもしれない。

普段は聞き手を務めることが多い柿次郎さんが、深ぼられるように聞かれている様が新鮮だったとスタッフのキキョウさんがコメントしてくれた。聞かれると考える、考えると深くなる、深くなると面白くなる。聞くということは、相手を面白くしていくということなのかもしれない。聞き手論も自分なりに深めてみたい。