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手を動かそう。収穫を焦るな。

TAKEHIKO YANASE

昨晩は小川町の有機農家である横田岳君のトークイベントに聞き手として参加した。岳くんは農家をやりながら、5年前から写真を撮っていて、3年前に初の個展を開催。今回は2回目となる展示となり、その最終日にその農業と写真にまつわる話を聴く会としてトークをすることになった。

はじめは、「たけさん、おがわのねの公開収録をしませんか?」と声をかけてもらったのだが、さすがに幼少期からの話を聴いていると写真の話には辿り着かなさそうだと直感し、予めPodcastの収録は済ませておいて、その続きのようなかたちでイベントを行ってみたのだった(一応今回のトークも録音はした)。

お客さんは24名、会場はPEOPLEの前の土間。岳くんは話がうまい。自分で考えを深めることもできるし、文献などを読み漁りその思考の領域を広げることもできるし、柔軟に人の意見に耳を傾けることもできる。おかげで僕としても回の進行は非常にやりやすく、60分予定は80分と延長となり、わらしべさんでの懇親会のために作っていただいていたドリアが「冷めちゃうよ」というアナウンスがなければ、延長線どころか、PK戦にもつれ込んでいた試合展開であった。

展示のタイトルは「子々孫々 有為自然(ししそんそん ゆういしぜん)」。代々受け継がれる人の手の入った自然という感じであろうか。本当に人の手が入っていない自然というものはもう地球には存在しないように思える。畑は当然人が操作して維持されている生態系であるし、山々の多くは人工林。自然保護区は人の手が入らないように保護されているという人の手が入っているし、海底にも気候変動の影響は何らかのバタフライエフェクトされているであろう。そういった状況を悲観することもなく、前向きな気持で、どのように人は自然に関わっていくべきであろうか、人も自然の一部であり続けるにはどうしたらよいだろうか、今の情報化社会、AIの到来はそんな有為自然にどのように影響を与えるのだろうかなど、話題はあちこちに展開されるようでありながら、お客さんの新しい脳の回路をつなぐインスピレーションになったようで、充実した時間となった。

岳くんとは今、小川町の農業や地域の未来に取り組んでいくために何ができるかを定期的に話し合っている。月に一度の定例として話す時間を設けており、来週もその回がある。まずは我々が考えていることを言語化、可視化して共有できる状態にするのが大切だと思っているが、いきなり要約されたものをつくろうというのも難しいし、その過程において大切なものが放置されたまま、あるいは排除されたままになってしまうのも何かこの包括的な取り組みに合わないような気がする。サビだけ歌うのではなく、イントロからじっくりと聴いて欲しい。だからこそサビはサビ足りうる。そんな意味で、PodcastなのかYouTubeなのかでまずたっぷりと語り、それを少しずつ要約していくかたちでプロジェクトのコアをつくり、そのコアを中心に少しずつ広げていくようなステップはどうだろうかと考えている。時間はかかるかもしれない。しかし、プロジェクトとは本来そのようなものなのかもしれない。まずは土を耕そう。手を動かそう。収穫を焦るな。